5月17日(土)大学院説明会が開かれます。

当研究室では大学院生を募集しています。酵母を使った老化研究、ゲノ ム研究、進化等に興味のある方は是非お越し下さい。見るだけはただです。楽しい議論をしに来てください。お待ちしています。
以下研究室の宣伝文です。

ゲノム再生研究部門
本研究室では細胞老化やゲノム維持のメカニズムを主に酵母を使って研究しています。

研究テーマ その1(その2以降は今回は省略)

「酵母を使った老化研究」

出芽酵母は出芽で増える単細胞真核生物です。通常単細胞生物は栄養条件さえ良ければ無限に増殖し続けますが、出芽酵母は1つの細胞(母細胞)から分裂(出芽)で作られる細胞(娘細胞)の数に限りがあり、老化現象を示すもっとも単純な生物です。興味深いことには母細胞は出芽の度に老化する(残された分裂可能回数が減っていく)のに対し、そこから生まれる娘細胞はリセットされ「若返り」を起こし、もとの分裂能力が回復します。我々はある遺伝子をノックアウトすると母細胞の寿命が約60%延長することを発見しました。この変異株は他には異常が認められず、寿命だけが延びています。

実はこの遺伝子、リボソームRNA遺伝子(rDNA)という生存に必須な遺伝子の安定性に関与している遺伝子です。rDNAは100コピー以上が反復した特殊な構造をとっており、ゲノム中でテロメアと並んで最も安定性が低い領域として知られています。この遺伝子をノックアウトするとその不安定なrDNAが安定化することが知られています。もしあなたがこの研究プロジェクトに加わるとしたら、一体どんな実験を計画しますか?創造力たくましい方、行動力に自信のある方、新しい何かを作り出したい方、是非議論しに当研究室のポスターの前に来てください。お待ちしています。ゲノム再生研究部門  教授 小林 武彦

4月5日 東京大学分子細胞生物学研究所の一般公開が行われました。

桜の見頃と重なり全国各地から8千人以上の方が見学に来られました。
当研究室は研究の紹介、DNA模型の折り紙の配布(荒木研究室作成)、DNA抽出実験を行いました。
多数のご来場ありがとうございました(会場が手狭で申し訳ありませんでした)。

また小林による講演会「生き物の寿命-ヒトは何才まで生きられるのか?」にも多数ご来場下さりありがとうございました。
いい質問が沢山あり、こちらの勉強にもなりました。

沼津市市民教養講座の講師をつとめました。

沼津市主催市民教養講座で「生物の老化機構」について講義をいたしました。たくさん質問して頂きありがとうございました。中でも「多くの生物で食べる量を減らすと寿命が延びる」という実験結果はショックが大きかったようです。食事が美味しく食べられなくなったらごめんなさい。

小林によるリボソームRNA遺伝子(rDNA)の機能に関する仮説がBioEssays誌(オンライン版)に掲載されました。

タイトル「細胞老化と癌化抑制におけるrDNAの役割 – rDNA仮説」
掲載誌BioEssays 30, 267-272 (2008); DOI: 10.1002/bies.20723
著者小林 武彦
論文の要約 リボソームRNA遺伝子(rDNA)は100コピー以上が繰り返して存在する巨大反復遺伝子であり、染色体中で最も安定性の低い領域です。そのためrDNAの状態(安定性やコピー数等)が細胞の機能に影響を与えている可能性が考えられます。本論文では、rDNAの遺伝子以外の生理機能として、老化促進作用とゲノムの安定性維持機構について考察しています。
 以前よりゲノムの不安定化が細胞老化の原因の1つと考えられていましたが、その具体的な機序については不明でした。小林は元々不安定なrDNAが、時間の経過により他のゲノム領域よりも優位に(早く)不安定化し、その産物であるリボソームRNAの質と量を低下させることで、細胞老化を促進している可能性をあげています。つまりrDNAの不安定性が細胞の老化速度を決める1つの要因ではないかと推察しています(細胞老化のrDNA仮説)。
 またrDNAはその不安定性ゆえに、外的、内的な刺激(紫外線や活性酸素等)に対して非常に感受性の高い領域です。この性質から小林はrDNAが一種の「ダメージセンサー」として機能し、刺激にいち早く反応し、チェックポイント制御等のゲノム保護機構を活性化するための「シグナル」を出す役割を担っているのではないかと推察しています(rDNAのダメージセンサー仮説)。この仮説によれば、rDNAの不安定性はアポトーシスや癌化抑制にも働いている可能性があり、今後重要な研究分野に発展すると期待されます。
原題A new role of the rDNA and nucleolus in the nucleus – rDNA instability maintains genome integrity 
Kobayashi, T.
BioEssays 30, 267-272 (2008); DOI: 10.1002/bies.20723

夏の体験入学を行いました。

8月から9月にかけて当研究室の「夏休み体験入学」が行われ、3名の学生さん(学部3年生)が参加しました。
短い期間でしたが酵母の遺伝学、バイオイメージング、マウスのゲノム解析等を体験して頂きました。

写真は井手研究員、坂技官に蛍光顕微鏡観察を教わる体験入学生。

小林の論文が2007年日本遺伝学会誌(Genes & Genetic Systems)GGS Prize 2007を受賞しました。


小林の論文が2007年日本遺伝学会誌(Genes & Genetic Systems)GGS Prize 2007を受賞しました。
10/10/07
受賞論文の要約リボソームRNA遺伝子の安定化戦略
 -DNA組み換え、姉妹染色分体接着、染色体凝縮のコラボレーションリボソームRNA遺伝子(rDNA)は100コピー以上がタンデムに連なった巨大反復遺伝子群を染色体上に形成しており、真核細胞のゲノム中で最もユニークな領域の1つである。通常反復遺伝子ではリピート間での相互作用が生じ、コピー数の減少や転座、染色体の不分離等の異常を引き起こすと考えられるが、rDNAについては「特別な機構」により常にほぼ一定のコピー数が安定に維持されている。本総説では、その「特別な機構」について筆者らの研究を中心に紹介する。受賞論文Kobayashi, T. (2006). Strategies to maintain the stability of the ribosomal RNA gene repeats. Genes Genet. Syst. 81, 155-161.