リボソームRNA遺伝子と細胞老化に関する論文がMolecular Cell 誌に掲載されました。

タイトル「リボソームRNA遺伝子の安定性が老化速度を左右する」
掲載誌Molecular Cell, Vol.35, p683-693 (2009); DOI:10.1016/j.molcel.2009.07.012
著者ガンレイ オーステン、井手 聖、坂 季美子、小林 武彦
論文の要約 ほとんどの生物は時と共に老化しやがて死んでしまうが、それでも生命が滅びず長期にわたり存続し続けることができるのは、子孫を残し世代交代を行っているためである。真核生物のモデル生物である出芽酵母(母細胞)は不等分裂(出芽)により小さい娘細胞を産み出す。母細胞は2時間に一回分裂し約20回分裂すると(約20個の娘を生むと)老化して死んでしまうが、娘細胞は「リセット(若返り)」を起こして、また20回分裂する能力を回復する。つまり、世代交代が一回の細胞分裂で起こるわけである。今回我々はこの若返り機構を解明するため、母と娘細胞のゲノムの違いを解析した。その結果ゲノム中で最も安定性が低いリボソームRNA反復遺伝子群(rDNA)が、出芽時に娘細胞で回復していることを発見した。さらに人為的にrDNAの配列を改変し不安定化しやすくすると、寿命が約20%短縮した。以上のことから出芽酵母では、rDNAが老化促進因子として働き母細胞の分裂回数を規定していると考えられる。
原題The effect of replication initiation on gene amplification in the rDNA and its relationship to aging.
Austen R.D. Ganley, Satoru Ide, Kimiko Saka, Takehiko Kobayashi
Molecular Cell , Vol.35, p683-693 (2009); DOI:10.1016/j.molcel.2009.07.012
新聞掲載等9月11日 中日新聞
9月11日 東京新聞
9月11日 静岡新聞
9月25日 朝日新聞
10月2日 科学新聞
Nature Structural & Molecular Biology誌 “Research Highlights” Vol.16, 1009 (2009)