Ide et al., (2010) Science 327, 693-696. がFaculty of 1000 Biologyの「Exceptional」論文に選ばれました。
Faculty of 1000 Biologyは世界中の研究機関で利用されている論文評価システムで、最新の論文の中から優れたものを推薦するサイトです。当該論文に対する推薦文は、以下のサイトより閲覧できます。
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タイトル:大過剰に存在するリボソームRNA遺伝子のコピーはゲノムの安定性の維持に重要である。
掲載誌:Science vol.327, p693-696 (2010)
論文名:「Abundance of ribosomal RNA gene copies maintains genome integrity」
著者名:井手 聖、宮崎 隆明、真木 寿治、小林 武彦
論文の要約:
遺伝子は通常1細胞あたり1コピーのみ存在するが、中にはコピーを増やし転写産物量を増大させている遺伝子もある。それらは増幅遺伝子と呼ばれ、同一遺伝子が染色体上あるいは染色体外に多数存在する。増幅遺伝子の代表格は、リボソームRNA遺伝子というリボソーム中に存在するRNAをコードする遺伝子で、真核細胞では数百~数千コピーが巨大な反復遺伝子群を染色体上に形成している。リボソームは細胞の全タンパク質の約80%を占めており、その骨格を作るリボソームRNAの遺伝子も1つでは足らず多数必要となる。しかし不思議なことに、その膨大なコピーの半数以上は転写されておらず、なぜこのような「働かない」余分なコピーが存在するのか長年の謎であった。今回我々はこの「働かないコピー」の役割について、それらはDNAにできた傷を修復するための足場となり、リボソームRNA遺伝子及びゲノム全体の安定性の維持に重要な役割を担っていることを解明した。(本研究は奈良先端大学院大学 真木 寿治教授との共同研究です)
原題:
Ide, S., Miyazaki, T., Maki, H., and Kobayashi, T. (2010). Abundance of ribosomal RNA gene copies maintains genome integrity.Science 327, 693-696.
DOI: 10.1126/science.1179044
http://www.sciencemag.org/cgi/content/abstract/327/5966/693
掲載新聞、紹介記事等:
2月16日朝日新聞朝刊
2月 科学新聞
nature reviews Mol.Cell Biol., vol.11, p160-
米国メディア 「The Scientists」
http://www.the-scientist.com/blog/display/57135/
JST 「Science Portal」 トップニュースhttp://scienceportal.jp/news/daily/1002/1002051.html
Current Biology 20, R368-R370.
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http://f1000biology.com/article/id/1345961/evaluation
| タイトル | 「リボソームRNA遺伝子の安定性が老化速度を左右する」 |
| 掲載誌 | Molecular Cell, Vol.35, p683-693 (2009); DOI:10.1016/j.molcel.2009.07.012 |
| 著者 | ガンレイ オーステン、井手 聖、坂 季美子、小林 武彦 |
| 論文の要約 | ほとんどの生物は時と共に老化しやがて死んでしまうが、それでも生命が滅びず長期にわたり存続し続けることができるのは、子孫を残し世代交代を行っているためである。真核生物のモデル生物である出芽酵母(母細胞)は不等分裂(出芽)により小さい娘細胞を産み出す。母細胞は2時間に一回分裂し約20回分裂すると(約20個の娘を生むと)老化して死んでしまうが、娘細胞は「リセット(若返り)」を起こして、また20回分裂する能力を回復する。つまり、世代交代が一回の細胞分裂で起こるわけである。今回我々はこの若返り機構を解明するため、母と娘細胞のゲノムの違いを解析した。その結果ゲノム中で最も安定性が低いリボソームRNA反復遺伝子群(rDNA)が、出芽時に娘細胞で回復していることを発見した。さらに人為的にrDNAの配列を改変し不安定化しやすくすると、寿命が約20%短縮した。以上のことから出芽酵母では、rDNAが老化促進因子として働き母細胞の分裂回数を規定していると考えられる。 |
| 原題 | The effect of replication initiation on gene amplification in the rDNA and its relationship to aging. Austen R.D. Ganley, Satoru Ide, Kimiko Saka, Takehiko Kobayashi Molecular Cell , Vol.35, p683-693 (2009); DOI:10.1016/j.molcel.2009.07.012 |
| 新聞掲載等 | 9月11日 中日新聞 9月11日 東京新聞 9月11日 静岡新聞 9月25日 朝日新聞 10月2日 科学新聞 Nature Structural & Molecular Biology誌 “Research Highlights” Vol.16, 1009 (2009) |
8月19日から28日までの10日間、パルスフィールド電気泳動法による変異 株のゲノム解析とバイオインフォマティクスを勉強しました。 (写真は、データの解析をする体験入学生)

DNA大量配列決定装置を見学したり、体験実験ではDNAの制限酵素による切断、電 気泳動のよる解析、制限地図の作製等を行いました。にぎやかな1日でした。 (写真は、電気泳動に挑戦中の韮校生)

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タイトル |
リボソームRNA反復遺伝子は協調進化により高度に均一化されている |
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掲載誌 |
Genome Res. 2007, 17, 184-191 |
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著者 |
オーステン ガンレイ、小林 武彦 |
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論文の要約 |
反復遺伝子には協調進化と呼ばれる普通の遺伝子とは異なる進化様式を持つものがある。通常の進化では遺伝子に生じた変異が個別に排除、あるいは固定されていくのに対し、協調進化では反復遺伝子の一つに入った変異が組換えによりリピート全体に伝播し、協調的に変化していく。しかし実際に協調進化がどの程度の頻度で起こっているのかについては、リピート全体の配列を決めた例がほとんどないため不明であった。今回我々は反復遺伝子の代表格であるリボソームRNA遺伝子について、ショットガン配列決定法に用いられたrDNAを含む多数の断片の配列情報を元に、rDNA全体に渡って配列を決定しリピート間の多様性について解析した。その結果rDNAは協調進化を示さない他の反復遺伝子に比べて圧倒的にユニット間での相違が少なく、配列の均一化が起こっていることが判明した。また配列の変化が見つかった位置も遺伝子領域、非遺伝子領域で差が見られなかったことから、変異の伝播が迅速であり、個別の遺伝子に起こった変異は選択を受けていないことを示している。 |
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原題 |
Highly efficient concerted evolution in the ribosomal DNA repeats: Total rDNA repeat variation revealed by whole-genome shotgun sequence data. |
イラストは当研究所知的財産室の平井祐子さんの作品です。
「静岡新聞 社編集局調査部許諾済み」

講義のタイトル「ゲノムの不安定性が引き起こす癌、細胞老化」
論文名-ゲノムが不安定化するとなぜ寿命が縮むのか?-テロメアとrDNAの役割を中心に-
著者-小林 武彦
掲載誌-Genes to Cells
内容-ヒト早期老化症(早老症)の原因遺伝子はゲノムの修復に関わる遺伝子であることが十数年前に判明しました。またヒト以外の生物でもゲノムが不安定化する(壊れやすくなる)と寿命が短縮することが知られています。しかしそのメカニズムは未だ不明です。筆者はゲノム中でも特に安定性が低いリボソームRNA反復遺伝子とテロメアが、その謎を解く鍵を握っていると考えています。
原題:How does genome instability affect lifespan?: roles of rDNA and telomeres.
Kobayashi T. Genes Cells. 2011, 16:617-24. (近日中にオープンアクセスになります)