DNA複製のタイミングとゲノムの安定性についての論文が米国微生物学会誌の「注目論文」に選ばれました。

雑誌名:「Molecular and Cellular Biology」 DOI: 10.1128/MCB.00324-20

論文タイトル:The S-Phase Cyclin Clb5 Promotes rRNA Gene (rDNA) Stability by Maintaining Replication Initiation Efficiency in rDNA

者:Mayuko Goto, Mariko Sasaki, Takehiko Kobayashi

後藤 真由子、佐々木 真理子、小林 武彦

論文概要: 

遺伝情報を守るメカニズムを発見

ーDNAを素早くコピーすることが遺伝情報の安定な維持に大切ー

細胞が殖える時には、事前にDNAを正確に複製(コピー)し、複製されたDNAを娘細胞に分配します。DNAの遺伝情報を短時間でコピーするために、細胞はDNA上の多くの場所から複製を始めます。DNA複製過程で異常が起こると、誤った遺伝情報が娘細胞に受け渡され、ガンや様々な病気の発症につながります。東京大学定量生命科学研究所の小林武彦教授と佐々木真理子助教、大学院生の後藤真由子は、細胞周期の進行、特にDNA複製の開始を司るClb5タンパク質をもたない出芽酵母の細胞では、リボソームRNA反復遺伝子の一部が削られたり増幅したりしてDNAが不安定になることを発見しました。Clb5タンパク質がないと、DNA複製開始の頻度が減少し、複製開始点同士の間隔が長くなり、複製装置が長く移動する必要が生じます。そのため複製装置の停止などのトラブルに遭遇しやすくなることが明らかになりました。これらの発見から、細胞がどのようなメカニズムで膨大な遺伝情報を正確に複製し、がん化などを回避しているのかを明らかにすることができました。

<報道等>

プレスリリース

http://www.iam.u-tokyo.ac.jp/pressrelease/210331-1/

米国微生物学会誌

https://mcb.asm.org