DNA複製阻害時に機能する新しいDNA修復機構の発見に関する論文がMol Cell誌に掲載されました。

発表雑誌 Molecular Cell(2017年5月18日発行)

論文タイトル:Ctf4 prevents genome rearrangements by suppressing DNA double-strand break formation and its end resection at arrested replication forks
著者:Mariko Sasaki and Takehiko Kobayashi
DOI番号:10.1016/j.molcel.2017.04.020
<要旨> 私たちの体は、数十兆個もの細胞からできています。たった一つの受精卵からこれだけの数の細胞を作り出すためには、遺伝情報を担うDNAを複製によって正しくコピーしそれを娘細胞に受け渡すことが大切です。DNA複製の途中でトラブル(停止)が起きると、DNAの切断(DNA二本鎖切断)が引き起こされ、遺伝情報が壊れることにより、がんや多くの疾患の原因となるゲノムの異常を引き起こします。しかし、これまでこの切断されたDNAを修復するメカニズムはよく分かっていませんでした。  今回佐々木真理子助教と小林武彦教授は、複製時に形成されるDNAの切断とその修復の過程を直接観察する実験系を確立しました。この実験系を用いて様々な因子の関与を検証した結果、Ctf4というDNA複製をになうタンパク質の1つが、DNAの切断の修復に必要であることが明らかになりました。  切断されたDNAの修復がうまくいかないとゲノムの異常を引き起こし、老化やがんの原因となります。本研究成果は、細胞の老化やがん化がなぜおこるのかを解明する重要な手がかりになると考えられます。

<成果についての報道>

5月19日 日本経済新聞電子版
https://www.nikkei.com/article/DGXLRSP445116_W7A510C1000000/

5月24日 日経産業新聞

6月12日ライフサイエンス新着論文レビュー

http://first.lifesciencedb.jp/?s=佐々木真理子