DNA複製、組換え、修復(3R)に関する国際会議を遺伝研国際シンポジウムと共催で行います。

http://3r2014.com/

開催日時:2014年11月17-21日
場所:御殿場高原ホテル 
参加人数:約200名(海外招待講演者23名、その他海外からの参加者約50名)
共催:東京大学分子細胞生物学研究所国際シンポジウム2014
後援:文部科学省科学研究費補助金新学術領域研究
「ゲノム普遍的制御」代表・花岡 文雄
「ゲノムアダプテーション」代表・篠原 彰
「非コードDNA」代表・小林 武彦
「クロマチン動構造」代表・胡桃坂 仁志

Faculty of 1000により優れた論文として推薦されました。

カレントバイオロジーの論文(saka et al., 2013)がFaculty of 1000により必読論文”Must read paper”として推薦されました。

http://f1000.com/prime/718095598?bd=1&ui=150229

Faculty of 1000とは、世界中の生物医学系の第一線の研究者が、出版された論文の中から優れたものを推薦する「発表後の評価」システムです。

細胞老化に関する論文がカレントバイオロジーに掲載されました。9/23/’13

タイトル:サーチュインによる非コードプロモーターの転写制御が寿命を決定する
著者:坂季美子、井手聖、ガンレイ オーステン、小林武彦
掲載誌:カレントバイオロジー、2013年9月23日、vol. 23、p1794-1798, on line Aug 29, 2013

原題:Cellular Senescence in Yeast Is Regulated by rDNA Noncoding Transcription.
Saka K, Ide S, Ganley AR, Kobayashi T.
Curr Biol. 2013 Sep 23; 23(18):1794-1798

要旨
ゲノムの安定性が低下するとヒトをはじめ多くの生物で老化が進行することが知られているが、そのメカニズムについてはほとんど判っていなかった。今回我々は、すべての生物に存在しゲノム中で不安定な「リボソームRNA反復遺伝子」が、細胞の老化速度を決定していることを、酵母菌を使った研究で突き止めた。
リボソームRNA反復遺伝子間に存在しその安定性を制御する「非コードプロモーター」を人為的に誘導可能なプロモーターに置き換えた細胞を作成した。その細胞ではプロモーターのオンオフで自由にリボソームRNA反復遺伝子の安定性を操作できると共に、酵母の寿命をも操ることができた。さらにその「非コードプロモーター」はヒトまで存在する老化抑制遺伝子サーチュインによって制御されていることから、サーチュインはリボソームRNA反復遺伝子の安定性を通して老化速度を決定していることを突き止めた。

<成果についての報道>
テレビ
8月30日 NHKニュース「おはよう日本」
8月30日 テレビ朝日「やじうまテレビ」
8月30日 テレビ朝日「モーニングバード」
8月30日 テレビ朝日「ANNニュース」

新聞
9月5日 毎日新聞朝刊
9月3日 日本経済新聞
9月3日 日経産業新聞
9月3日 日刊工業新聞
8月30日 静岡新聞
8月30日 宮崎新聞

雑誌
9月9日 日経バイオテク
10月20日  パンプキン11月号

ネットニュース
8月30日 Yahoo Japan 「トピックス」
8月30日 時事ドットコム
8月30日 日本版ウオール・ストリート・ジャーナル
8月30日 ニコニコニュース

当研究所室の仕事が論文になりました。

“遺伝子の爆発的増加は「輪転がし」で”

著者:井手 聖、坂 季美子、小林 武彦
原題:Rtt109 Prevents Hyper-Amplification of Ribosomal RNA Genes through Histone Modification in Budding Yeast

Satoru Ide, Kimiko Saka, Takehiko Kobayashi
Research Article | published 04 Apr 2013 | PLOS Genetics 10.1371/journal.pgen.1003410
細胞にはたくさんの種類の遺伝子があり、通常その数は生涯を通じて変化しませんが、時として爆発的に増加(遺伝子増幅)することが知られています。例えばカエルの卵が出来るときリボソームRNA遺伝子というリボソームを作る遺伝子が数万~数十万コピーに増加します。また進化においては、現在ファミリー遺伝子やクラスター遺伝子として存在する相同性の高い反復遺伝子群は、かつて1つの遺伝子からの大規模な遺伝子増幅により発生したと考えられています。以前よりこの爆発的な遺伝子増幅はローリングサークル(輪転がし)型DNA複製と呼ばれる環状DNAを鋳型にした複製の連続反応によると考えられていましたが、そのメカニズムについては判っていませんでした。今回我々はその誘導にはRTT109というクロマチン構造の変化に関わる遺伝子が重要な役割をはたしていることを発見しました。

 RTT109遺伝子はヒストンをアセチル化修飾しクロマチン構造を変化させる働きがあります。この遺伝子の発現が低下すると、リボソームRNA遺伝子が突如としてローリングサークル型DNA複製を開始し、コピー数が450コピー以上に増加しました。その分子機構としては、RTT109がなくなるとDNAにできた傷を修復する過程に変化が生じ、本来起こらないローリングサークル型DNA複製中間体が形成され、輪っか状の鋳型がコロコロ転がりながら複製されてコピー数が増加します(図参照)。
生物はこのヒストン修飾を利用した遺伝子増幅スイッチのON/OFFにより、時に遺伝子数を爆発的に増やして、環境変化への適応や発生、分化の制御を行っていると考えられます。

(図)

研究成果は2013年4月4日付けのPlos Geneticsに掲載されています。

小林教授が第29回井上学術賞を受賞しました

本賞は自然科学の基礎的研究で特に顕著な業績を挙げた50歳未満の研究者に対して与えられる賞です。2007年にはiPS細胞の山中伸弥教授が受賞しています。

受賞題目「遺伝子増幅の分子機構の全容解明と癌化や老化との関係性の発見」

<受賞研究の解説>
小林教授は、高度に反復したリボソームRNA遺伝子(rDNA)が如何にコピー数を安定に維持しているのか、単離した多数の変異株を用いて詳細に解析し、rDNA遺伝子増幅の分子機構の全容を解明しました。またリボソームRNA遺伝子の安定性やコピー数の変化が、細胞の老化速度や発ガン物質に対する感受性に影響を与えることを発見し「細胞老化のrDNA 仮説」を提唱するに至っています。
 遺伝子のコピー数の変化は一卵性双生児間でも多数起こっていることが近年のゲノム解析から明らかになってきています。今後、医学領域においても遺伝子増幅と老化・発ガンとの関係が解明されることが期待され、小林教授の発見はきわめて重要です。

井上科学振興財団 http://www.inoue-zaidan.or.jp/

文部科学大臣賞表彰

小林が平成24年度科学技術分野の文部科学大臣表彰(研究部門)を受賞しました。

本賞は我が国の科学技術の発展等に寄与する可能性の高い独創的な研究又は開発を行った個人又はグループに贈られる賞です。小林教授はゲノムの改変、特に遺伝子の増幅機構の研究に携わり、増幅遺伝子の代表格であるリボソームRNA遺伝子の増幅機構を解明しました。

受賞題目「細胞内の遺伝子増幅機構及びその生理作用の研究」
<研究概要>
 遺伝子増幅とは遺伝子がコピー数を増やす現象で、生物の進化や環境適応の過程で重要な役割を果たしてきました。医学の分野では癌遺伝子の増幅は癌の悪性化を引き起こし、その治療に用いる抗がん剤も薬剤耐性遺伝子の増幅により効果が妨げられています。最近の一卵性双生児の研究では、生後の遺伝子のコピー数の変化が兄弟の「個性」を作り出していることも判ってきました。このように遺伝子増幅は生物学的、医学的に重要な生命現象であるにも関わらず、そのメカニズムはよく判っていませんでした。本受賞研究では遺伝子増幅を示すリボソームRNA遺伝子をモデルに、その分子メカニズムを解明しています。また、増幅した遺伝子群は染色体の不安定化を引き起こしやすく「細胞老化」の一因となることも合わせて発見されました。  本成果は次世代医療に貢献が期待されるヒトゲノム研究においてその構造的基盤を支えると共に、超高齢化社会を迎える我が国の重要課題の1つである「加齢に伴う疾患の発症メカニズム」の解明に繋がる研究です。

平成24年度科学技術分野の文部科学大臣表彰受賞者の決定について(文部科学省)
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/24/04/1319413.htm

受賞式ー同賞受賞の岩田想さん(左)と。 平成24年4月17日文部科学省にて。

文部科学大臣賞表彰

宮崎さんの論文が出版されました。

論文名-輪になって踊るリボソームRNA遺伝子の不思議な動き
著者-宮崎 隆明、小林 武彦
掲載誌-Genes to Cells
内容-rDNA(リボソームRNA遺伝子)は染色体上に巨体反復遺伝子群を形成しています。そのためリピート内での組換え、欠失、染色体の不分離等を起こしやすいゲノム中で最も不安定な脆弱領域でもあります。本論文では、出芽酵母の約1.5メガベース(1.5 Mbp)の巨大なrDNA全体に渡ってlacO配列(約150個)を挿入し、それに結合する蛍光タンパク質GFP-LacIを発現させることで、生きた状態でrDNAの動態を観察する事に成功しました。その結果rDNAは細胞周期を通じて核小体の表面付近を激しく動き回っており、G2/M期には凝縮したリング状になり回転運動のような動きを見せることが判りました。またM期終期では、rDNAの長さ(コピー数)が染色体の分離速度に影響を与えていることも判明しました。
原題:Visualization of the dynamic behavior of ribosomal RNA gene repeats in living yeast cells.
Miyazaki T, Kobayashi T. Genes Cells.2011, 16:491-502.