Faculty of 1000により優れた論文として推薦されました。

カレントバイオロジーの論文(saka et al., 2013)がFaculty of 1000により必読論文”Must read paper”として推薦されました。

http://f1000.com/prime/718095598?bd=1&ui=150229

Faculty of 1000とは、世界中の生物医学系の第一線の研究者が、出版された論文の中から優れたものを推薦する「発表後の評価」システムです。

細胞老化に関する論文がカレントバイオロジーに掲載されました。9/23/’13

タイトル:サーチュインによる非コードプロモーターの転写制御が寿命を決定する
著者:坂季美子、井手聖、ガンレイ オーステン、小林武彦
掲載誌:カレントバイオロジー、2013年9月23日、vol. 23、p1794-1798, on line Aug 29, 2013

原題:Cellular Senescence in Yeast Is Regulated by rDNA Noncoding Transcription.
Saka K, Ide S, Ganley AR, Kobayashi T.
Curr Biol. 2013 Sep 23; 23(18):1794-1798

要旨
ゲノムの安定性が低下するとヒトをはじめ多くの生物で老化が進行することが知られているが、そのメカニズムについてはほとんど判っていなかった。今回我々は、すべての生物に存在しゲノム中で不安定な「リボソームRNA反復遺伝子」が、細胞の老化速度を決定していることを、酵母菌を使った研究で突き止めた。
リボソームRNA反復遺伝子間に存在しその安定性を制御する「非コードプロモーター」を人為的に誘導可能なプロモーターに置き換えた細胞を作成した。その細胞ではプロモーターのオンオフで自由にリボソームRNA反復遺伝子の安定性を操作できると共に、酵母の寿命をも操ることができた。さらにその「非コードプロモーター」はヒトまで存在する老化抑制遺伝子サーチュインによって制御されていることから、サーチュインはリボソームRNA反復遺伝子の安定性を通して老化速度を決定していることを突き止めた。

<成果についての報道>
テレビ
8月30日 NHKニュース「おはよう日本」
8月30日 テレビ朝日「やじうまテレビ」
8月30日 テレビ朝日「モーニングバード」
8月30日 テレビ朝日「ANNニュース」

新聞
9月5日 毎日新聞朝刊
9月3日 日本経済新聞
9月3日 日経産業新聞
9月3日 日刊工業新聞
8月30日 静岡新聞
8月30日 宮崎新聞

雑誌
9月9日 日経バイオテク
10月20日  パンプキン11月号

ネットニュース
8月30日 Yahoo Japan 「トピックス」
8月30日 時事ドットコム
8月30日 日本版ウオール・ストリート・ジャーナル
8月30日 ニコニコニュース

当研究所室の仕事が論文になりました。

“遺伝子の爆発的増加は「輪転がし」で”

著者:井手 聖、坂 季美子、小林 武彦
原題:Rtt109 Prevents Hyper-Amplification of Ribosomal RNA Genes through Histone Modification in Budding Yeast

Satoru Ide, Kimiko Saka, Takehiko Kobayashi
Research Article | published 04 Apr 2013 | PLOS Genetics 10.1371/journal.pgen.1003410
細胞にはたくさんの種類の遺伝子があり、通常その数は生涯を通じて変化しませんが、時として爆発的に増加(遺伝子増幅)することが知られています。例えばカエルの卵が出来るときリボソームRNA遺伝子というリボソームを作る遺伝子が数万~数十万コピーに増加します。また進化においては、現在ファミリー遺伝子やクラスター遺伝子として存在する相同性の高い反復遺伝子群は、かつて1つの遺伝子からの大規模な遺伝子増幅により発生したと考えられています。以前よりこの爆発的な遺伝子増幅はローリングサークル(輪転がし)型DNA複製と呼ばれる環状DNAを鋳型にした複製の連続反応によると考えられていましたが、そのメカニズムについては判っていませんでした。今回我々はその誘導にはRTT109というクロマチン構造の変化に関わる遺伝子が重要な役割をはたしていることを発見しました。

 RTT109遺伝子はヒストンをアセチル化修飾しクロマチン構造を変化させる働きがあります。この遺伝子の発現が低下すると、リボソームRNA遺伝子が突如としてローリングサークル型DNA複製を開始し、コピー数が450コピー以上に増加しました。その分子機構としては、RTT109がなくなるとDNAにできた傷を修復する過程に変化が生じ、本来起こらないローリングサークル型DNA複製中間体が形成され、輪っか状の鋳型がコロコロ転がりながら複製されてコピー数が増加します(図参照)。
生物はこのヒストン修飾を利用した遺伝子増幅スイッチのON/OFFにより、時に遺伝子数を爆発的に増やして、環境変化への適応や発生、分化の制御を行っていると考えられます。

(図)

研究成果は2013年4月4日付けのPlos Geneticsに掲載されています。

小林教授が第29回井上学術賞を受賞しました

本賞は自然科学の基礎的研究で特に顕著な業績を挙げた50歳未満の研究者に対して与えられる賞です。2007年にはiPS細胞の山中伸弥教授が受賞しています。

受賞題目「遺伝子増幅の分子機構の全容解明と癌化や老化との関係性の発見」

<受賞研究の解説>
小林教授は、高度に反復したリボソームRNA遺伝子(rDNA)が如何にコピー数を安定に維持しているのか、単離した多数の変異株を用いて詳細に解析し、rDNA遺伝子増幅の分子機構の全容を解明しました。またリボソームRNA遺伝子の安定性やコピー数の変化が、細胞の老化速度や発ガン物質に対する感受性に影響を与えることを発見し「細胞老化のrDNA 仮説」を提唱するに至っています。
 遺伝子のコピー数の変化は一卵性双生児間でも多数起こっていることが近年のゲノム解析から明らかになってきています。今後、医学領域においても遺伝子増幅と老化・発ガンとの関係が解明されることが期待され、小林教授の発見はきわめて重要です。

井上科学振興財団 http://www.inoue-zaidan.or.jp/

文部科学大臣賞表彰